1.食育を通した人づくり、地域づくり活動(2009年6月~)
食生活をめぐる環境変化の中で、「魚離れ」が急速に進行していますが、健康的な食生活の維持、地元水産物への理解と消費促進、食文化の継承などには、子どものころから水産物への興味や知識の習得、地域の食生活・食文化と地域産業とのかかわりを学ぶ機会が必要です。
また、資源量の少ない水産物は大事に消費し、身近で資源量の豊富な旬の魚をできるだけ消費するなど、消費者側の意識改革も重要です。
北海道大学大学院水産科学研究院に在籍した5年間、みなとまちづくり女性ネットワーク函館との協働により、食育活動を実施しました。
(1)地元の食材を活用した食育と地域振興
みなとまちづくり女性ネットワーク函館では、2007年のはこだてイカマイスター第1回認定試験で4人が合格したことから、翌2008年から、はこだてイカマイスターとしてイカの普及に貢献するため、イカを活用した食育活動を行うことになりました。
・みなとと魚の学習会 食育シンポジウム~イカキッズマイスタースクール~(2008年)
クッキングキャスターの星澤幸子先生をお招きして、子供達とイカ塩から作りをしました
・コンブとイカキッズマイスター出前講座を実施(2009年 函館市北星小学校)
地方の元気再生事業~はこだて「水産・海洋」で元気なまちづくり推進事業の一環として、コンブとイカの出前授業を実施しました
・~おいしく、たのしくイカを学ぼう~(2010年,2011年 函館市湯川小学校)
北大大学院生の指導によるイカの解剖授業、函館の伝統料理の一つであるイカめしづくりを行いました。
2008年 |
(2)消費者と生産者の交流
様々な地域資源を有する函館ですが、次のような特徴があります。
①地域の中で生産者と消費者が近い
②多様な魚種の水産物があり、水産物流通加工・販売など多くの機能がある
③水産物に触れる機会が多い
④学術研究機関の集積
これらは、函館の優位性であり、関係機関の連携と立地上の優位性を生かすことで、食育を通して子供が地域ブランドに親しむことができますし、消費者は生産地の取り組みをしり、かしこい消費の仕方を学ぶことができます。
みなとまちづくり女性ネットワーク函館では、2008年から函館市の漁業者と交流し、これまで見る機会もなかった漁業体験を通して地域の水産業について理解を深めました(図2)。一方、漁業者にとっても私たちとの交流は消費者の声を直接聞く貴重な機会となったのではないかと思います。
コンブ洗浄・乾燥 | コンブ加工 | スケトウダラ網外し |
(3)地域水産物普及活動
・「コンブのおはなし1」の制作・出版
函館市の南茅部地区は養殖コンブ発祥の地であることから、その歴史や技術について子供たちにわかりやすく伝える豆本「コンブのおはなし1」(図3)を制作・出版しました。コンブ養殖技術の開発者である元水産庁北海道区水産研究所に勤務されていた故長谷川由雄博士にインタビューを行い、まとめたものです。
・「コンブワークショップin はこだて」(2009年 函館市)
コンブ料理体験会を開催し、函館市立磨光小学校の管理栄養士である水山薫先生のコンブレシピに従い、女性ネットワークメンバーが料理を作り参加者にふるまいました。
その中で、勝野美江さん(当時:文部科学省科学技術政策研究所 第3調査研究グループ上席研究官)の講演と折谷久美子さん(みなとまちづくり女性ネットワーク函館代表)による「コンブとイカキッズマイスター出前講座(北星小学校)」の報告を実施いたしました。
コンブのおはなしⅠ | 試作したコンブ料理 |
2.水産物トレーサビリティの普及活動(2003年~)
NPO法人水産物トレーサビリティ研究会理事(2006年~)として、水産物トレーサビリティ普及に関して、青森県十三湖、北海道天塩町でのシジミトレーサビリティの構築などに関わりました。
とくに十三湖のシジミトレーサビリティは実用化に至り、マリンエコラベルを取得するなど、他産地との差別化を行っています。
3.地域ビジョンづくりとその実現に関する研究活動(2000年~)
地域の将来ビジョンづくり、ビジョンの内容、ビジョンを実現するためのシナリオの具体的推進はどうあるべきかを地域とともに考えてきました。仕事や研究を通じて、将来ビジョンの合意形成の場づくり、ビジョンの具体化による経済効果を「見える化」したり、合意形成のためのツールを開発したり、その活用を提案するなどしてきました。
成果をまとめた論文の一部を以下にお示しします。ご興味のある方は、ご一読いただけると幸いです。