第9回マリンナレッジサークル(漁村勉強会)「積丹の漁業と日本海漁業振興を考える学習会」の報告

NPO法人マリンネットワークでは、積丹地域の漁業振興について勉強会を実施してまいりました。一昨年8月に開催した第6回マリンナレッジサークルでは、積丹町、古平町、神恵内村の方を札幌にお招きして、積丹地域の現状についてご紹介いただきました。昨年8月に開催した第8回マリンナレッジサークルでは積丹地域の漁業振興について参加者とともに意見交換を行いました。そして平成28年2月13日に積丹町へ伺い、地元の学習会を開催しました。約60名の関係者にご参加をいただきました。(なお、積丹町では冬季営業している宿泊施設が少なく、宿の確保が難しかったため、広く会員の皆様に本件のご案内ができませんでした。お詫び申し上げます)

開催概要

■開催日時:平成28年2月13日(土) 15:00~17:30
■共催:積丹地域マリンビジョン協議会・NPO法人マリンネットワーク
■会場:積丹町総合文化センター
■プログラム:
・主催者挨拶 積丹町長 松井秀紀氏
・来賓挨拶  衆議院議員 中村裕之氏
・話題提供
①「水協法・漁業法について」後志総合振興局水産課長 加藤健司氏
②「足元の資源を見直し、できることから始めよう」積丹町環境生態系保全アドバイザー 河村博氏
③「歯舞地区マリンビジョン協議会の取り組みについて」歯舞漁業協同組合総務部長 斎藤義嗣氏
・意見交換 「積丹の漁業について考える」

主な内容を以下にまとめました。
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NPO法人マリンネットワーク 片石理事長

 

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主催者挨拶 松井町長          来賓挨拶 中村裕之衆議院議員

話題提供
①「水協法・漁業法について」後志総合振興局水産課長 加藤健司氏

漁業権(定置、区画、共同)は一定の漁業を営む権利であり、漁協に対して与えられた免許として漁業法に規定されている。漁協は漁業権行使規則を定め、組合員は漁業の許可を与えられている。水協法は漁協の種類や事業の内容、運営機関、組合員の権利、組合員の義務を定めているものだと説明がありました。

②「足元の資源を見直し、できることから始めよう」積丹町環境生態系保全アドバイザー 河村博氏

これまでの調査研究から得られた様々な知見から、積丹にある資源を活用し、漁業が持続するためのアイデアをたくさんお話しいただきました。1)積丹の特徴として、川から沿岸に供給される栄養が非常に豊富なこと、それが海藻の生育に大きく関係していることを漁業者との共同調査で明らかになったこと。2)積丹町のサケ増殖は放流方法を工夫することにより資源が増加する可能性があり、サケプロジェクトを立ち上げて取り組み始めたこと。3)サクラマスは森、川をつなぎ、生態系をつなぐことによって増やすことができる。4)漁業者自ら行動すること、情報や知識を得てそれをアイデアに結び付けてほしいというお話でした。
③「歯舞地区マリンビジョン協議会の取り組みについて」歯舞漁業協同組合総務部長 斎藤義嗣氏

歯舞地区マリンビジョンでの取り組み~キャッチフレーズは最東端からのメッセージ~ の紹介を通して、次の6つのポイントに留意しながら活動を進めたと紹介されました。
1)自然消滅的な流れに至らないよう強く意識する 2)地域ぐるみの協調性が必要 3)若い人のモチベーションを保たせる 4)長期的視点を持ち、すぐに利益を求めない 5)地域の主要メンバーに参画してもらい、漁協が核となり率先垂範する 6)北海道開発局・北海道・市町村・大学など、産学官連携のもとアドバイスをいただきながら進める
具体的な報告と活動内容については資料(4.3MB)を参考にしてください

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講師 加藤健司氏                 講師 河村博氏

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講師 斎藤義嗣氏                 意見交換コーディネーター 遠藤理事

意見交換

NPO法人マリンネットワーク 遠藤理事のコーディネーターにより、地元の漁師さんを中心に積丹町の漁業についての意見をお聞きしました。主な意見は以下の通りです。
・父の後を継ぎ漁師になって2年目、磯まわり(ウニ、アワビ、ナマコなど)の漁業をしている。資源が少なくなっているが、どう取り組んでいいかわからないことが多い(青年部員(美国支所))
・漁師になって2年目、磯まわり(ウニ、アワビ、ナマコなど)の漁業をしている。ウニ剥きの出面さんが不足して困っている(青年部員(美国支所))
・漁師になって3~4年、天気に左右されている。ウニの実入りがしないので、円筒の籠を使った養殖に取り組むことになっている(青年部員(美国支所))
・底建漁業と浅海漁業を主にやっている。磯焼けが問題(青年部員(余別支所))
・ウニについては水揚げが7トン、7千万円減少した。餌をやりながら育てる部会を立ち上げ取り組み始めた。サケの海中飼育もおこなっている(東しゃこたん漁協)

上記の意見を受けて、行政や研究機関の方から
・自然エネルギーを利用した陸上飼育施設を整備することにより出荷期間を長くできないか検討するための調査を実施している(北海道開発局小樽開発建設部)
・新しいアイデアを出して取り組んでいく人が必要だ。沿岸を少し休ませて沖に漁業を展開しながら沿岸の資源回復を図ることが可能(北海道)
・地場の資源の見直し、有効活用(ウニにコンブを与えて実入りをよくする)には継続と根気が必要だが、ぜひ続けてほしい。若い人たちが今後の方向性を考えていく。イワガキ、バカガイ、アサリの技術開発を行っている(道総研)

今回の学習会を通して、積丹の漁業は現状抱える問題も多いのですが、一方で、若い漁業者が後継者として意欲的に漁業をしていたのが印象に残りました。日本海漁業の今後についてできる限り応援したいと考えている人(企業、研究者、行政など様々)がたくさんいるので、いろんな可能性を将来につなげるような地道な活動が必要なのかと思いました。講師の方、集まってくださった地元や関係機関の方、準備にご協力くださった積丹町の皆様、ありがとうございました。学習会のあと開催した交流会も、参加者も多く大変盛り上がりました。

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DSC00499 お宿 かさい で行われた交流会(出席者 32名)